古代日本に君臨した女帝「持統天皇物語」

古代日本に君臨した女帝「持統天皇物語」

今回は里中満智子の漫画「天上の虹」のあらすじや内容を簡単に紹介します。

この漫画の主人公である鸕野讃良皇女(うののさららのおうじょ)後の持統天皇は天皇に即位して権勢を振るう、愛と野望の物語です。

持統天皇は大化の改新の立役者として有名な中大兄皇子(後の天智天皇)を父に持ち、律令制の体系をまとめた壬申の乱を起こす・大海人皇子(後の天武天皇)を夫に持つ女性です。

 

1巻が出たのが昭和58年、最終巻が刊行されたのが平成27年と32年もの長きに渡り続いた漫画です。最初は雑誌に掲載されていましたが、後半は単行本ありきで不定期刊行されていました。

母世代から娘世代に引き継がれているファンが多い漫画です。本当に長い物語だったので、読後は魂が抜けたというファンも多かった様です。

究極の古代の愛の物語

究極の古代の愛の物語

主人公は一貫して鸕野讃良皇女なのですが、彼女の人生を追う漫画なので登場人物は目まぐるしく変わります。

そして、その登場人物たちの愛憎が余すことなく描かれています。長く読んでいる人は登場人物の中に、かならず自分を投影できる人物を見つけることができますし、理想のタイプの異性を見つけることができると言って過言ではないのです。

 

例えば、鸕野讃良皇女は大海人皇子を心から愛していますが、大海人皇子は数多くの女性を愛しています。

そんな中でも、永遠の女性とも言うべき万葉の歌人として名高い額田王への愛は、兄である中大兄皇子との三角関係にもつれこみ、読んでいる方が息苦しさと狂おしい愛の物語へと引き込まれるようになります。

しかし、そんな大海人皇子は生涯、一番愛し抜いたのは他でもない鸕野讃良皇女なのです。

二人は男女の愛を超えた、戦友としての絆で結ばれています。日本という国を形作る上で、この上ないパートナーであったのでした。

 

また、鸕野讃良皇女の父・天智天皇は死に際し、後継には身分の低い母の生んだ大友皇子を据えます。

本来なら、鸕野讃良皇女の夫であり天智天皇の弟である大海人皇子が相応しいのですが、そのようにはなりませんでした。一旦は、大海人皇子たちは吉野に身を隠し隠遁生活に甘んじます。

しかし、それは一時のことで天智天皇が死すと瞬く間に兵を集めて挙兵し、大友皇子を相手に大戦が始まります。それが歴史に名高い「壬申の乱」です。父側の勢力と夫との狭間にある鸕野讃良皇女でしたが、迷わず夫をとります。

そして、ここに大友皇子は倒れ、天武天皇の時代が幕を開けます。

自らが即位して非情な女帝となる

天武天皇と二人三脚で政治を行ってきた鸕野讃良皇女でしたが、戦友であり最も愛する夫の天武天皇が病に倒れて死んでしまいます。

やむなく女帝として立つことになった鸕野讃良皇女は持統天皇として政治に邁進しました。

政治を行う上で感情を配することが何よりも大事と、肝に銘じて振舞う鸕野讃良皇女の孤独を思うとき、上に立つものの孤独を読者も体験することになります。

そして鸕野讃良皇女は言います。「自分は強くない。しかし強くあろうとした。」この気持ちがグッと胸に迫るポイントです。

 

皇族というと遠い世界のことのように思いますが、古代の歴史を漫画にして生々しく愛憎劇を描いてくれた、里中満智子さんには敬意を表したいです。

この天上の虹を書いてる途中で癌になり闘病生活まで体験した、里中満智子さんの渾身の力作です。是非読んでみてください。